怖い話:連れて行くから(洒落怖)

怖い話
怖い話:『連れて行くから』(洒落怖)

 

看護婦をしている友人の体験です。

 

 

彼女が勤務していた病院は

大病院だったのですが、

ターミナルケアの患者

(最後を迎える患者)が

入院する科があったらしく、

当時の彼女はそこの担当でした。

 

ある日、彼女の担当の病室から

ナースコールがありました。

 

呼び出しをしたのは老婆で

痴呆が進み、

ほとんど話もできないような

状態でした。

 

たまにふと

意識が戻ることがあるので、

今日もそれかと思ったそうです。

 

病室に向かい、

老婆の耳元で声をかけます。

 

「おばあちゃん、どうしましたか?」

 

すると

眠っているように見えた老婆が

ふと目をあけ、

 

「アヤカさん、あなたも連れて行くから」

とつぶやいたそうです。

 

誰の名前?と思いつつ、

 

声が小さくかすれていたので

あまりよく聞き取れず、

何度か聞き返したのですが、

もう老婆はそれ以上話すことなく

虚空を見つめたままに

なってしまいました。

 

老婆に布団をかけなおし

病室を出た彼女は、

なんとなく老婆がもう

長くないだろう事を理解しました。

 

それから三日後、

彼女が危惧していたとおり

老婆の容態が急変し、

息子夫婦を呼び出しました。

 

その時に知ったのですが

息子の奥さんの名前がアヤカでした。

 

老婆が息を引き取るまでの間

母さん母さんと悲しそうに声をかける

息子の後ろでつまらなそうな顔をして

立っている奥さんは、

あまり印象がよくありませんでした。

 

アヤカさんに老婆の言葉の事を

伝えるか迷ったのですが、

縁起でもないし

信じてもらえないかもしれないと

思いやめたそうです。

 

さらにそれから三日後

深夜の勤務のためナースルームで

待機していたときでした。

 

救急車で緊急治療室に

一人女性が運ばれてきました。

 

いやな予感がして、

患者をみるとそれはあの

アヤカさんだったそうです。

 

友人はあわてて

当直の医師を呼びにいき、

自分も対応をしなければと

準備している最中に

突然意識を失いました。

 

椅子に座り込んで失神しているのを

1時間ほどあとに交替に来た

同僚に起こされたそうです。

 

その間に、アヤカさんは

心臓疾患で亡くなっていました。

 

話を聞くと、当直の医師も

ひどい頭痛で意識が朦朧としたり、

手伝っていた別の看護師も

猛烈な眠気に襲われたりと、

散々な状態だった…

と後でこっそり教えられました。

 

それから何年か経って

その事はすっかり忘れていたころ

そのときの同僚と久々にあって

食事をしているときに

あの老婆とアヤカさんの話になりました。

 

同僚のお姑さんが

たまたま老婆と知り合いだったらしく

よくアヤカさんの愚痴を

聞かされていたそうです。

 

なんでも、

夫である老婆の息子さんが

優しくて気が弱いのをいいことに

貯金を使い込んだり

家事を放棄したり、

息子さんの事を精神的に

ひどく追い詰め、

やりたい放題だったそうです。

 

でも息子さんはなかなか

離婚に踏み出せず、

困っていました。

 

老婆は、最後の最後に

息子を守ったのかもしれませんが

友人としては

心中穏やかではなかったとか。

 

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