怖い話:坂の上に(洒落怖)

怖い話:坂の上に(洒落怖)

 

私が今の家に住む前に

住んでいたアパートは

駅から少し離れた

場所にありました。

 

駅周辺は華やかなのですが、

少し離れると急に寂しくなる…

そんな場所だったのです。

 

私の住んでいたアパートは

小さな丘の上を開いて

作った場所にあり、

少し小高いところにあったので、

結構長い坂道を登らないと

いけない場所にありました。

 

 

その日、私は友人たちと

遅くまで飲み歩き、

アパートへと続く道を

歩き始めたのは

夜中の二時ごろでした。

 

かなり酔っていて、

いつもの坂でも

ものすごくしんどく、

一気に上るのは無理だ

と判断したので途中で

休憩を入れることにしました。

 

坂の途中にある自動販売機で

コーヒーを買い、

立ち止まって飲んで、

何気なく進行方向である

坂の上に目線をやると、

女の姿が目に入ったのです。

 

出歩くには遅い時間ですが、

私みたいなのもいるわけですし、

男性がいるよりましかな、

なんてのんきに考えていました。

 

思えばこのときに、

引き返してタクシーにでも

乗れば良かったのです。

 

最初はあまり

気にも留めなかったのですが、

その女は一向に

動く気配がありません。

こちらを見たまま

ずっと立っているのです。

 

丘の上にある街頭は

逆光になってしまっていて、

顔は全然わかりません。

気持ち悪いな、と思いつつ、

残っていたコーヒーを飲みながら、

そのまま5分ほど

携帯を見ていました。

 

しばらくして、

息切れも収まったし帰ろう、

と上を見上げると、

まだその女がさっきまでと

同じ場所にいるのです。

 

「いやいや…これはやばいな…」

 

そこでようやく、

見えてはいけないものに

出会ってしまったのではないか

という警報が頭の中に

鳴り響いたのです。

 

このまま真っ直ぐ坂を登って

いってはいけない気がする。

 

そう思い、駅のほうまで

引き返そうと振り返った時、

総毛だってしまいました。

 

先ほどまで坂の上にいたはずの女が、

私の数歩前に佇んでいたのです。

 

声も出ないほど驚き、

手に持っていた携帯を

取り落としそうになりました。

と、そのとき

うつむいていた女が顔を上げ、

こちらを見ようとしたのです。

 

私はその時、

直感的にその女の顔は

「絶対に見てはいけない」

という気がして、

 

あわてて方向転換し、

全速力で坂を駆け上りました。

 

あのときほど早く、

あの坂を上れたことは

ありませんでした。

 

幸いにも、

その女は追ってくることも

話しかけてくることもなく、

私は自分の部屋に

転がり込んだのでした。

 

そのまま風呂にも入らず、

テレビのボリュームを上げて

朝まで過ごしました。

 

そのまま何もないまま

朝日が昇ったので、

ほっとしてシャワーを浴び、

仕事に行くために眠い目を

こすりながら準備をしました。

 

そのときに気づいたのです。

 

スーツのポケットに、

黒くて長い髪の毛が

ごっそりと入っていたことに…

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