怖い話:こっちにくる(洒落怖)

 

怖い話:こっちにくる(洒落怖)

 

私が5歳くらいのころの

おぼろげな記憶で、

怖かった話がありました。

 

祖母の大きな家に

一緒に住んでいた

時期があったのですが、

おばあちゃん子だった私は

よく祖母と一緒に寝ていました。

 

祖母の家の仏間には

きれいな日本人形があって、

きれいな着物がすごく好きで

良く眺めていたのですが、

少し怖いなあと思っていたのです。

 

その人形にある夜から

異変が起こりました。

 

ちょうど祖母の部屋の

ふすまをあけるとその向こうに

廊下がずっと続いていて、

廊下の先がその日本人形が

置いてある仏間でした。

 

ある日、夜中に目が覚めると、

なぜかそのふすまが

少しだけ開いていて、

廊下の向こうから

その日本人形がこちらに

向かってくるのです。

 

その夜から、

毎晩毎晩夜中に目が覚めて、

こちらに向かって来る

人形を見てしまうのでした。

 

それがものすごく怖くて、

祖母を起こして

「おばあちゃん、人形がこっちきてる」

と言うと、

祖母は廊下に向かって

その人形を両手で

押し返すような動きをしました。

 

すると、日本人形は

廊下の向こうの暗闇へと

消えていくので、

安心して眠るのでした。

 

次の日、明るくなってから

仏間に向かうと、

その日本人形は

いつもと同じように

ガラスケースの中に

納まっているのでした。

 

私はそれを確認して、

怖い夢を見たのだなあ、

と思っていました。

 

それから父の転勤で

祖母の家を引越してから

十年以上の時が経ちました。

 

祖母の家に集まった時に

家族みんなで、

夏によくある怪談番組を

見ていました。

 

そのとき、小さい頃の

日本人形の話をしました。

「そういえば、私小さい頃よく人形がこっちに向かって歩いてくる怖い夢みてたよ」

すると祖母が、

「ああそうだった。一時期、毎晩3時ごろにあんたが、人形が来る!って泣き出すから、何か良くわからないけど廊下の方に向かって押し返す振りをしたら安心して寝てたねぇ。」

 

私は祖母の話を聞いて、

凍り付いてしまいました。

 

怖い夢だと思っていたあれは、

やはり本当の出来事だったのです。

 

良く話を聞いてみると、

祖母の記憶ではふすまなんて

開いていなかったそうで、

人形を見ることは

一切無かったそうです。

 

あの人形は家を建て替えた

今も床の間に飾られています。

 

歩いてくることは

りませんが、

この日本人形は一緒に

遊びたかったのかもしれない

と思って、出来るだけ

ガラスケースを

良く拭くようにしています。

 

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